デジタルトランスフォーメーション時代のハイブリッドクラウド

デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation=DX)は「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念で、スウェーデンのウメオ大学、エリック・ストルターマン教授が提唱した概念です。言うまでもなく、スマホやIoT、5GやAIなど、私たちの生活のありとあらゆるシーンでデジタルの大変革が進行しており、ITは私たちが生活していくうえで、年齢を問わず生活になくてはならないものとなっています。

また、企業社会の視点から見てみると、従来のビジネスの枠組みに対して、デジタル技術を駆使することで新たな製品やサービスの価値を創造し、競争を勝ち抜いていく必要があります。もしもアプリケーションやデジタル製品の開発、アップデートに何ヶ月もかかれば、企業収益は大幅に減少してしまいます。デジタルトランスフォーメーションの時代は、あらゆる種類の企業に、敏速なデジタル・アジャイルな製品やサービスの開発を可能とする体制の構築を迫っています。

このような時代と企業環境において、異なる環境や各社の提供するクラウドサービスを自在に組み合わせたハイブリッドクラウドは、企業にとって不可欠の環境基盤となっています。ここではハイブリッドクラウドの強みやメリットについて考えていきましょう。

ハイブリッドクラウドとは

ハイブリッドクラウドとは何か

ハイブリッドクラウドとは、オンプレミスの自社サーバーやパブリッククラウド、プライベートクラウド、ハウジングなど、さまざまな種類のクラウドサービスを組み合わせた運用形態を指します。それぞれのクラウドサービスやインフラの特徴、利点を融合させることによって、セキュリティやコスト、管理上のメリットを生むことが可能になります。

ハイブリッドクラウドにおける組み合わせ

ハイブリッドクラウドにおける組み合わせ例として最も主流なのは、パブリッククラウドとプライベートクラウドの2つを組み合わせたパターンです。クラウドは本来、パブリックで開かれた場所にあるのが当然であり、プライベートという言葉とは対立します。ところがその半面、プライベートな環境で運用されているクラウドも多く存在します。

例えば、少し前の時代の企業内LANは純粋にプライベート環境のみで運用されていました。企業における、この閉じたプライベートネットワークの機能を残しつつ、最近拡大の目覚ましいパブリッククラウドを利用するひとつの形が、ハイブリッドクラウドとも言えます。

その場合、従来の企業内LANのように完全に閉じたネットワークではなく、パブリッククラウド上に企業専用の仮想のネットワーク環境を作り、オフィスとはVPNでつなげて、あたかも社内ネットワークの一部のように利用しつつ、巨大なパブリッククラウドの持つ優位性も取り込んでいくような活用が考えられます。

ハイブリッドクラウドのメリット

ハイブリッドクラウドにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

低コストで高いセキュリティレベルが維持できる

企業が取り扱う情報によって、セキュリティ基準の厳しさは異なり、適用されるセキュリティルールも異なります。あらゆる情報に対して同一の厳しい基準を適用していくことは理想ですが、それを行おうとすればコストが高くなってきます。そこで、重要度の高い機密情報はプライベートクラウドに置き、比較的重要度のレベルが低い情報はパブリッククラウドに置いておくといった手段が考えられます。これによって、情報の重要度の差を考えつつ、低コストで機密性や完全性を確保した運用を行うことができます。

テスト環境準備など移行しやすさ

従来のネットワークから移行するときについてはどうでしょうか。移行に当たってはあらかじめテスト環境を用意することが必須となりますが、それらの環境を自前ですべて用意するとなると、環境構築に工数とコストがかかります。しかし、パブリッククラウドで準備されるテスト環境を活用すれば、敏速に低価格で環境構築ができます。また、本番環境への影響を気にしなくても自由にテストができるため、非常に移行がしやすいとも言えます。

データ保全

地震や津波などの災害や、ハッキング、クラックやウイルス感染などでシステムが壊滅的な被害を受けた場合にも、可能な限り早急にデータとシステムの回復を目指す事業継続計画(BCP)の一環として、ハイブリッドクラウドの活用は極めて有用と考えられます。またパブリッククラウドを利用して、データを地理的・物理的に離れた場所にバックアップしておくことで、データの可用性を高め、災害復旧を敏速に行うことができます。

負荷分散

外部からの膨大なアクセスに対応するために、常時巨大なサーバー構成を維持することは無駄がありますし、コスト負担が大きくなります。プライベートクラウドとパブリッククラウドを融合・併用して稼働させれば、負荷の分散を図ることができます。特にパブリッククラウドには負荷の増大に応じて自動的にスケールアップを図ったり、特定の時間帯のみスケールを保証したりする仕組みもあるので、負荷や人的リソースを効率的に分散させることができます。

ライセンス管理

自社の保有するソフトウエアライセンスをパブリッククラウド環境で転用して利用できる場合もありますが、これらの再配置もハイブリッドクラウド上でなら効率的に解決できる場合が多く、ソフトウエア資産の適正化を行うことができます。

マルチクラウドとは

マルチクラウドとハイブリッドクラウドの違い

ハイブリッドクラウドと類似の用語としてマルチクラウドという言葉があります。用語の使い方の違いとしては、ハイブリッドクラウドが「他社クラウドにオンプレミスの自社サーバーを含めたクラウドの組み合わせ」を示すのに対して、マルチクラウドは「複数の会社のクラウドサービスのみを組み合わせて運用するシステム」を指す点です。

マルチクラウド導入の意義

マルチクラウド導入の意義は、ハイブリッドクラウドと重なる点が多くなりますが、そのメリットとしては、

  • 各社のクラウドサービスの優位点を組み合わせて使うことができる
  • 1社のクラウドサービスで、万が一データ消失やサーバー障害などの事故があってもリスクを分散することができる
  • 1社の持っているサービスメニューに依存せず、ニーズに応じて柔軟に対応することができる

などが挙げられます。

まとめ:DX時代に求められるハイブリッドクラウド、マルチクラウドの利点

DX時代に求められるハイブリッドクラウドやマルチクラウドの導入に際して、求められる要素を満たすのは、高信頼・高性能・大容量かつ低価格の革新的ストレージシステムです。データ分散アーキテクチャによって、極めて高いスループットを得られることや、コンポーネントの障害が発生した場合にも、性能や信頼性などのシステム特性への悪影響がない、迅速なリカバリー機能も求められるところです。