マルチテナントのメリットと問題点、デジタルトランスフォーメーション時代の最適な選択肢とは?

企業がストレージサービスの導入を検討する際に、最初に候補に上挙がるのは、クラウド経由で利用するストレージサービスではないでしょうか。ここで問題となるのが「シングルテナント」と「マルチテナント」のどちらを選択するかです。クラウド形式のサービスはマルチテナントであるのが一般的ですが、膨大なデータの維持管理やカスタマイズ性を考えると、自由度が低く、状況によっては適さない場合もありえます。そもそもマルチテナントとはどういったもので、どういったサービスに適しているのでしょうか。マルチテナントについて説明するとともに、自社にとって最適なスタイルを選択するポイントをお伝えします。

ストレージサービスの導入時に知っておくべきマルチテナントとは?

顧客情報、営業管理情報、財務情報など、企業が保有する情報は年々増加しています。またインターネットの進化により、これまで取得できなかったデータも入手可能になったため、データを保管する大容量のストレージが欠かせなくなりました。

現在多くの企業で、コスト削減やBCP対策などの理由から、ストレージをクラウド化するところが増えています。このとき、コスト削減を実現するための選択肢として考えられるのが「マルチテナント」です。マルチテナントとは、ひとつのサーバーを複数の利用者で共有する方式のことです。カスタマイズ性に乏しく、安定した稼働が約束されない懸念があるものの、コストを抑えてすぐ利用できるというメリットがあります。

これに対して、複数の利用者ではなく、1社だけでサーバーを利用するのが「シングルテナント」です。シングルテナントはカスタマイズ性が高く、安定した稼働を実現できます。一方で、1社ごとに最適な状態に設定されるため導入までに時間がかかることや、コストが高額になるというデメリットがあり、一般的にはマルチテナントが多く利用されています。

デジタルトランスフォーメーション時代におけるマルチテナントの問題点

ストレージをマルチテナントのクラウド上におくことでコスト削減は実現できますが、いくつかの問題点も発生します。そのひとつが、政府が推進するデジタルトランスフォーメーションへ対応した場合のリスクです。

デジタルトランスフォーメーションとは、クラウドやビッグデータ、ソーシャル技術などを駆使し、市場や顧客が変化するなかで「新たな価値」を創出し、競争優位性を確立していこうとするものです。

IT人材の不足による既存システムのブラックボックス化、維持管理費の高騰、さまざまなITシステムのサポート終了……こういった現状の課題を放置すると、2025年から2030年にかけて、日本全体で最大年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるといわれているのです。

では、なぜデジタルトランスフォーメーションへの対応でマルチテナントが問題となるのでしょうか。理由は、マルチテナントの仕組みにあります。マルチテナント方式では、統合された複数のシステムにぶらさがっている多くの仮想サーバーからストレージへのアクセスが集中します。これにより、ひとつの仮想サーバーに対する高負荷なデータ処理が、ほかの仮想サーバーの処理にも影響を与えます。その結果、ストレージの性能がシステム全体のパフォーマンスを劣化させてしまうのです。

つまり、自社がそれほど多くのデータ容量を使っていなかったとしても、同じサーバーの別の利用者が大容量のデータ処理を行えば、自社のサーバー処理にも遅れが出てしまうのです。パフォーマンスが劣化すれば、ストレージを使うすべての業務に遅れが生じます。これを解消するには、ストレージの容量増加、より高速に処理を行えるサービスへの移転などを検討しなければなりません。しかし、本来はコスト削減をねらってマルチテナントを導入したはずなのに、大容量かつ高速なサービスに移転せざるをえなくなれば、かえって高コストとなってしまいます。

競合他社に対して優位性を確立するには、できるだけ迅速に、さまざまなデータの分析・解析を行わなければなりません。これは、デジタルトランスフォーメーション時代において、企業が生き残っていくための大原則です。しかし、マルチテナントの導入により迅速性が阻害される可能性があることが、大きな問題となっているのです。

マルチテナントの利用に適した業務とは

マルチテナントの活用は、デジタルトランスフォーメーションの実現を阻害する可能性があります。一方で、クラウドのストレージサービスを活用することは、コスト削減やBCP対策につながります。そのため企業が「マルチテナントも上手に活用していきたい」と考えるのは妥当ではないでしょうか。そこで、ひとつの対策方法として、利用する業務やデータに応じてストレージサービスを使い分ける方法を紹介します。

例えば、契約書や財務帳票のように「保管すること」が目的であり、分析や解析を必要としないデータはマルチテナントで管理できます。ほかの利用者が大容量のデータ処理を行っても、企業活動に大きな支障は生じません。一方、分析・解析して企業活動に応用する必要のある、顧客情報、営業活動などのデータはマルチテナントのストレージ管理に不向きです。処理が遅れてしまうリスクがあるからです。また、シングルテナントを利用すると高コストになることは避けられません。

そこで、頻繁に分析・解析を行うデータは、自社内にストレージを導入して維持管理します。自社内で管理すれば、稼働の安定性を保つことができるうえ、カスタマイズの自由度も広がります。こうしたメリットを考えれば、クラウド上のストレージサービスだけではなく、「自社内にストレージを導入する」という考え方も選択肢のひとつになります。システム全体の総コストを抑えられる可能性も高いでしょう。

まとめ:利用する業務、目的によって最適な形式の選択を

マルチテナントは、人的・金銭的なコストを抑え、必要なときに、必要なだけ、すぐに使いたい、といったニーズに最適な方式です。ただし、クラウドサービスは複数の企業が同時に利用するため、他社の利用状況によっては必ずしも安定した稼働が約束されるとは限りません。

デジタルトランスフォーメーションを実現させるにあたって、クラウドは欠かすことのできない要素のひとつです。しかし、データ量が増えていくと、低コストで利用できるマルチテナントであっても、高いコストがかかってしまう場合があります。もちろん、それはシングルテナントの場合も同様です。

状況によっては、自社でストレージを用意して、データのバックアップや維持管理を行ったほうがコストを抑えられる場合もあります。クラウドファーストがあたりまえの時代になりつつありますが、それだけにしばられると、かえって「できること」が限られてしまうおそれがあります。さまざまな状況に対応するには、オンプレミスも併せて活用するといった柔軟な選択肢を持つことが重要です。

INFINIDATは、テナントや利用部門、アプリケーションごとにデータの入出力量を制限し、必要となる性能を管理することで、マルチテナント方式での使用に対応したストレージです。ストレージへの負荷や使用量が管理できるため、パフォーマンスの安定性向上を図れます。状況に応じて柔軟に対応する。これこそが、本当の意味での「デジタルトランスフォーメーション時代の考え方」といえるでしょう。